犬フィラリア症について

  

犬フィラリア症という病気

犬フィラリア症は、正確には「犬糸状虫」という名前の寄生虫が心臓に寄生してしまう病気です。そうめんくらいの太さで長さは30センチもある白くて細長い虫が心臓の中に入り込むために、血液の循環が悪くなり、さまざまな全身症状が引き起こされ、死に至ることもあります。蚊が運び屋となって広がり、主に犬から犬に感染しますが、最近の研究では、犬糸状虫はまれに猫にも感染し、致命的となることがあると分かっています。また人にも感染してしまう例も報告されています。猫の場合は犬と異なり、心臓よりも主に肺に問題が起こるといわれています。


犬フィラリアの一生

犬フィラリアの一生

蚊が血を吸うときに、目に見えないくらい小さな犬フィラリアの幼虫(ミクロフィラリア)を一緒に吸い込みます。そして、2週間ほど蚊の体内で過ごした後、その蚊が別の動物を刺したときに蚊の唾液と一緒に幼虫が皮膚の中に入りこみます。幼虫は脱皮を繰り返しながら皮膚や筋肉の中を移動し、血管の中に入り込み、血液の流れによって心臓までたどり着きます。心臓や肺動脈の中で成虫になった犬フィラリアにはオスとメスがいて、メスは心臓や肺動脈の中でミクロフィラリアを産むようになるのです。


犬フィラリアの恐ろしさ

犬フィラリアに感染してもすぐには症状が出てきません。しかし、小さな動物の小さな心臓の内腔に何匹も寄生するようになると、血液の流れが悪くなったり、心臓や肺動脈の動きが悪くなったりします。具体的な症状としては、咳をする、呼吸が荒い、元気・食欲がなくなる、お散歩に行きたがらない、お腹に水が溜まってくる(お腹が張ってくる)、血色素尿がでる(赤茶色のおしっこがでる)などが見られるようになります。血液の流れが悪くなるため、脳貧血を起こして失神して突然倒れることもあり、放っておけば当然、命にかかわってきます。


犬フィラリア症になってしまったら

愛犬の場合もし、寄生数が少ないうちであれば、新たな寄生を予防薬で防ぎながら、心臓や肺動脈内の犬フィラリアが徐々に死滅するのを待つ、という方法もあるのですが、その寿命は約5年もあります。全身麻酔をかけて特殊な器具を使って、心臓や肺動脈の中から犬フィラリアを取り出すという方法もありますが、リスクが高く、とても危険な方法です。つまりこのような事態になる前の対策がとても重要なのです。


犬フィラリア症を防ぐには

一番良いのは蚊に刺されないことかもしれません。でも実際にそれがとても難しいのは、人でもそれが出来ないことから良く分かると思います。地球温暖化のせいでしょうか、最近は冬でも蚊を見かけるようになりましたしね。室内飼いだから、外に散歩に出ないからという考えも危険です。人間だって室内で蚊に刺されてしまうことはありますよね。では、どうしたらいいのでしょう?蚊に刺されたとしても、心臓や肺動脈にたどり着く前に犬フィラリアの幼虫を駆除してしまえばいいのです。現在一般的なのは、月に1回飲ませることによって、予防が出来るタイプの薬です。最近は、ペットに簡単に食べさせられる角切りビーフのような薬もあります。また、猫用のチュアブルタイプのお薬も当院で処方しています。



犬フィラリア症の検査方法

犬フィラリアが心臓や肺動脈内にいて、ミクロフィラリアを産んでいれば、少量の血液を顕微鏡で見ると小さなミミズのようなミクロフィラリアを直接観察することが出来ます。もし、ミクロフィラリアが見つからなかったとしても、犬フィラリアが存在する証拠(抗原)を見つけ出す検査キットもあるため、動物病院での検査で正しい診断を下すことができます。


当院からのメッセージ

犬フィラリア症予防薬は蚊が出始めてから、蚊の季節(シーズン)が終了してから1カ月後まで続けます。投薬を始める前には、犬フィラリア症にかかっていないことを確認する血液検査が必要となります。当院では犬フィラリア症対策が必要な時期に葉書などで飼主さんにお知らせしています。蚊の時期がきたらワンちゃんもネコちゃんも必ず当院に連れて来てください。


 

犬フィラリア症予防薬の投与で大切なことが2つあります。

  • 「期間中は確実に飲ませる」
  • 「蚊が見られなくなってからの最後の投薬を忘れない」

蚊が出る期間は地域によって異なります。例えば、同じ県内でも海辺の方が暖かいため蚊が早く発生するといったケースや、水辺が近くにある地域で蚊の発生数が多いため他の地域より1カ月分多く投薬しなければならない、といったケースもあります。